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とても夢とは思えない感覚で、意識もぼんやりとしてる感じはなく、かなり鮮明である。
俺は恐る恐る自分の頬を摘まんでから、軽く力を加えた。
普通に痛い。なんでだ。夢だよな、これ。
「えぇっと、……何やってるの?」
彼女が不思議そうにこちらを見つめていた。
「いやぁ、ははは……」
誤魔化すように作り笑いをして、俺はとりあえず一旦冷静になってみることにした。
もしこれが夢ではなく現実だとしたらどうだろう。
なんだかよくわからないけどタイムスリップしてしまった、みたいな。
どうやら彼女は俺のことを知っているみたいだし、現状から見るに高校時代の同級生なのではないだろうか。
俺はポケットに入っていた携帯を取り出して日付を確認する。
年は元の時間から約五年前。一月の半ばで、高校三年。
ちょうど俺が記憶をなくす少し前の頃だ。
「ん? どうかしたの?」
考え込んでいた俺に、彼女がそう問いかける。
「ああ、いや、何でもないよ」
あくまで平静を装って俺はそう返した。
正直誰なのかも全く思い出せない。
「そう? あ、そろそろ授業始まっちゃうからまたあとでね」
そう言うと彼女はさっさと自分の席に戻っていった。
なんでこんなことになっているのかはわからないが、なぜだか少し懐かしい気がした。
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