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エピローグ
晴れ渡る空。
華やかなドレスに、それを引き立てるスーツ姿。この後、教会から出てくる二人にフラワーシャワーをして派手に祝う。
今日は結婚式。
隙を見て、女性陣は男性陣を品定めし、男性陣は仕事の幅を広げるため名刺交換に抜かりない。
(株)三四五は、私たちのライバル会社の(株)今山グループに吸収されることになり、私たちとの取引はなくなった。私がやり取りをしている前から、水面下で動いていたらしい。株をある程度取得されていると、その会社は取得会社の意見を聞かなければならず、私が気付いたころには手遅れだったそうだ。
『ンヘル』は私との関係を黙秘していた。社長の態度が気になり、期日まで情報を伝えなかったことが功を奏し、今山グループに情報が漏れることはなかった。
そのせいで、『ンヘル』は責任を追及され退職、私はお咎めなし。桜川グループで息のかかっている会社に就職させたかったが、桜川グループと今山グループの暗黙のルールにより断念。その後の消息を探らないことを条件に、今山グループがどちらにも関わることのない就職先を斡旋したそうだ。
「あのっ、彼女いますかあ?」
「連絡先教えて下さあい」
「ちょっと、うちの上司に気安く話しかけないでくれる?」
「そうよ、あんたたち、どこの会社?」
全く。待機中に揉めごとを起こさないでほしい。私は後ろから近づいて、彼女たちにご挨拶をした。
「こんにちは皆さま。お元気そうで」
「ああっ、明穂さま。お久しぶりです」
「ええっ、明穂さま?はっ?」
私の元職場の女性社員と、圭介さんと一緒に働く女性社員たちだ。元職場の人にとっては、私は契約を打ち切られた出来損ないだろう。彼女たちは、私に頭を下げる女性社員と、私を交互に見て指さししている。
「人指し指をさすのは、失礼だと思うのですが……」
「はあ?だって、あなた、契約打ち切られてクビになったじゃん。そんな仕事のできない人が頭下げられてるなんて、信じられないんですけどー」
傲慢な態度。強がる二人に、私は同調したように振る舞う。
「そうですよね。あの時はご迷惑をおかけいたしました」
「そうよそうよっ。どれだけ迷惑かけたと思ってるんだって、ねえ」
「そうですよお」
そんなやり取りに我慢していると、無言を貫いていた圭介さんがやっと口を開く。
「あのさ」
「はあい」
「悪いんだけど、妻にそれ以上失礼な態度を取るなら、それなりに考えるよ?」
「え?」
「はあ。君たちは、親会社の社長も知らないのか。末端だからしかたがないのかな?妻は社長の娘さんだよ」
「えええっ」
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