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『ンヘル』
ピピピッ、ピピッ。
圭介さんがセットしてくれた目覚まし時計のアラームが鳴った。
私は、どちらかというとスマホ派なんだけど、この目覚まし時計の音は隣の圭介さんの場所に響くそうで、心配性な圭介さんのために、叩き返してくるまで壁を叩く。
同じ部屋で一緒に朝を迎えたことはない。
すぐに叩く音は帰ってくるし、圭介さんのほうが先に部屋を出るから、二度寝、三度寝してもわからないっちゃわからないんだけど。
「んーっ!」
やっぱり、圭介さんが側に居てくれるだけで、安心して眠れるなあ。
食卓テーブルには、ミントの香りがするメモ用紙と、簡単な朝食。
『おはよう。今日も一日楽しい日でありますように。今日のご飯は、お茶漬けです。出汁は熱々だから、そのまま急須で入れて大丈夫』
私が朝が弱いことに配慮してくれた今日の朝食は、鮭を炙ってほぐされた出汁茶漬。他に食べたいものがあっても邪魔しないように、栄養を考えた優しさも、見え隠れする。
(物音で起きないよう、わざわざ自分の部屋で作って持ってくるんだよね)
「いただきます」
私は寝起きのまま、食事を楽しんだ。
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