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「もしかして、ですけど、N-28と会話しましたか?」
ここで働き始めて三か月。
夏の暑さも大分和らいできた頃合いに、珍しくR博士が声をかけてきた。
本日最後のゴミ捨てを終わらせ、あとはロッカールームで作業着から通勤着に着替えるだけ、というところだった。
R博士とちゃんと話すのは、最初にここに派遣されてきた日以来だ。
それまで、軽い会釈程度の挨拶がせいぜいだったので、緊張に体がこわばった。
「いや、ないと思いますけど……ていうか、あいつ、話せるんですか?」
N-28がしゃべれるなんてのは、初耳だった。
「発話機能自体は搭載されているのですが、まだ機能したことはなかったんです。それが最近、N-28がメンテナンス中や充電中に、よくしゃべる……というか、歌うようになりまして。ある種のメロディーがついてるんですよ。こう……」
顔をしかめ、うろ覚えのメロディーを思い出しながら、R博士が軽く口ずさんだ。
へたくそすぎて音程はちっともわからなかったけど、リズムとフレーズに覚えがある。
最近俺がはまっている、テレビドラマの主題歌だ。
しまった、と俺は血の気が引いた。
「それ、たぶん、俺、です」
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