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やがて目的地にたどり着いた。
年季の入った建物だった。
築うん十年といった様子の、明らかに古びた……廃墟寸前の……ボロい研究棟が、三棟ほど立っている。
窓という窓が曇り、所によってはヒビが入っていて、おざなりにガムテープが補修していた。
戸井や看板、ドアノブなど金属部という金属部に、茶色くもこもことした錆びがこびりついていて、隅という隅にはクモの巣が張っている。
ドアノブを回すと、ざらざらとした手触りに、背筋がぞわりと総毛立った。
建物に入り、受付に声をかけようとして、固まる。
受付のテーブルの下で、親指大のゴキブリが白目をむいて(この時俺は初めてゴキブリでも白目をむくことがあるのだと知った)死んでいたのだ。
仕事上、虫の死骸にはなれっこだ。
もっとひどい、死にざまも数多く見てきた。
だけど、この場所は、そもそも「掃除」という概念があるのかも疑わしい。
手が届かない、爪が甘い、なんてレベルではなかった。
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