1.新しい場所

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もともとこの仕事には、大した情熱も使命感もなかった。 せいぜい食えればいい、社会復帰の軽いリハビリになればいい。 そんな思いで、始めた仕事だ。 しかし、今、俺は強い決意を抱いていた。 俺が、なんとかしなければ。   少なくとも、俺自身がここに通えるくらいには、清潔にしなくては……と。 ひび割れた塗装(割れているのが表面だけでありますように……)の壁に沿って、事務員の女性が案内してくれたのは、ぼろぼろの金属扉の前だった。 「こちらでおかけになってお待ちください」と残し、(きびす)を返して去ってゆく。 こじんまりとした会議室だ。 プラスチックのテーブルとパイプ椅子が二セット、向かい合って設置されている。 上座と下座がどっちか忘れたので、とりあえず向かって右側の椅子に腰かけた。 黒いビジネスリュックを膝に乗せ、なんとなしに顔を上げる。 天井には、二本の蛍光灯が白く光っていた。 表面をふわふわした灰色の埃が、覆っている。 埃から数本伸びた細いクモの糸が、隙間風にそよいで、ゆらゆらと揺れていた。
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