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1.新しい場所
ある日、俺の体は動かなくなった。
骨を折ったわけでも、ましてや死んだわけでもない。
異常がなくても、人間の体は動かなくなることがあるのだ。
新入社員になって三か月目の夏の日。
通勤用の自転車を漕ぐ足が、不意に止まった。
前に進めず、仕方なしに降りて道端に座り込んだ。
タイムカードを押す時間になっても。
昼を回っても。
日が落ちても。
体は動かなかった。
今思えば、動けなかったのだ。
会社を引き払った後は、療養期間という名の無職の時を経て、今俺は派遣の清掃員として働いている。
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