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こんなことをしたって意味なんかない。友達と二人だけで楽しい小説に、一体どんな価値があるというのか。小説家になって売っていくのならば、一人でも多く大衆を喜ばせ、買って貰える作品を書かなければ何に意味もないというのに。
今思うと、愛弓ちゃんがあたしのところからいなくなったのは。ただあたしが、約束を破ってしまっただけではなかったのかもしれなかった。
明らかにあたしも冷めていたからだ。リレー小説をやるということに。小説を書き続け、小説家という夢を見ることに。
お金にならない、現実的ではないことに打ち込む意味なんてない、なんて。本当はそんなこと、誰にも決めつけられるはずがなかったというのに。
――愛弓ちゃんは気づいたのかな。あたしの、そんな投げやりな気持ちに。
だから、その後は“現実的に”自分を磨くことに終始したのだ。中学からは、母が勧めてきた私立に行った。高校もそこそこの偏差値の進学校に進んだ。成績をキープして、本をたくさん読んで、賢い人間になって。そうしていつか父と同じ銀行に入ること、それが最も現実的な未来予想図であると考えたから。
銀行勤めがしたかったわけでもなく、父に自分達の会社に入れと命令されたわけでもないというのに。
――そして、無駄だと決めつけて、部活にも入らなくて。……部活動で一生懸命頑張ってる子たちを、どこかで見下してた。自分は彼らなんかよりずっと現実を見ているし、ずっと優れた人間だから……って。
自分は、間違っていたのだろうか。
いつの間にか、あたしの心を負った男子たちと同じものになり果てていたのだろうか。一生懸命頑張る人間を嘲笑って、自分が優位だと思い込みたい人間に。
そうだ、だから稀美のことも馬鹿にして、自分より下である彼女が聖樹に愛されているなんてありえないと憤慨して――。
「……わかんないわよ、あたしは……」
何がわからないのか。
段々とそれさえも見失って、一人部屋でぶつぶつと呟く他術はなかったのだ。
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