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掠れるような、どこか自信なさげな声が、窓から入ってきた風に攫われていく。だからこそ真実だとわかった。
そういえば、少女漫画か何かでこんなセリフがあった気がする。
恋をすると、人は不安になる、自信をなくすと。嫌われたくなくて、ちょっとした自分の欠点が気になって仕方がなくなって、心配になって、怖くなって。
でも同じだけ、幸せになれる、と。恋は繊細で、怖くて、それでいて温かいものなのだと。――目の前の少年も今、その味を必死で噛みしめている最中なのかもしれなかった。
「でも、俺はサッカーバカだからさ。……付き合っても、誰かのために時間を割ける余裕もないのに……迷惑かけるだけじゃん?変に気を遣わせるのも嫌だし。そもそも、ちょっと話しただけの俺が好きだって言ったって、迷惑がられるか信じて貰えないかのどっちかな気がしてさ。フラレるより、そっちのが怖いつーか」
「あー……」
それはあるかも、とあたしは遠い目をしたくなった。
迷惑がられるということはないだろうが、信じて貰えるかは微妙だ。いかんせん、彼女は自分の見た目がまったく可愛くないことに自覚があるようだった。聖樹があなたに興味があるかも?とそれとなーく誘導してみたらものすごい勢いで否定されたのは記憶に新しい。
――イケメンもイケメンなりに苦労があんのね……。
なんだろう。
ちょっとだけ、気の毒だと思わないでもなかった。
「……俺からも、一つ訊いていいかな、東野さん」
ぐるぐると思考を回していると。聖樹はやや真顔になって、あたしに尋ねてきたのだった。
「なんで、俺のことが好きなの?俺達だって、ほとんど話したこととかねえじゃん?……というかさ」
恋は自信をなくすもの。
恋は幸せになれるもの。
恋は苦く、甘く、繊細なもの。
「本当に、俺のこと、好き?どのへんが?」
「!」
あたしはついさっき、心の中で転がした言葉を思い出していた。
あたしにとっての恋とは、どういうものであったのかと。
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