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「いやだって、東野さんって俺にとってもものすごい高嶺の花というか。そもそも、俺達みたいな庶民には絶対的に釣り合わない人だと思ってたしさ。まさかそんな東野さんから告白されるだなんて誰が予想するよ?マジで、何かの罰ゲームか揶揄われてるだけじゃないかって思うじゃん?好きって気持ちが本当だとしても、そこまで本気じゃないのかな、って。だから、その……ごめんって言うのに、あんまり抵抗がなかったのもあるというか」
実際怒るばっかりで傷ついてる様子なかったし、と言われてしまえばこっちもぐうの音が出ない。その通りだとしか言いようがないからだ。
そもそもが一目惚れだったかもしれないなんて、たった今あたし自身で気づいてしまったレベルなのだからどうしようもない。
「……本当に酷いんですけど」
繰り返しながら、少しだけ腑に落ちた自分に気付いた。何で聖樹が、あたしの告白をあんなにあっさり断ったのか。他に好きな子がいると言って北部稀美を挙げたのか。そして、好きなのにどうして告白しないのか。
全部繋がってしまったらもう、納得する他ないではないか。あたしは最初から、勝負の土俵にさえ上がっていなかったのだ。上がる前に不戦敗が決まっていたような状況。――高嶺の花のお嬢様キャラ、みんなより格上の存在。あたし自身のため、そんなイメージを自分で振りまいていたのは紛れもない事実である。
「あーあ、ほんっと……恋愛ってわけがわかんないわよね。あたしはずっと、お見合い結婚以外は……長い時間かけて恋愛感情ってものを作っていって、お互いはっきりどこどこが好きだ―ってのがわかるようになってから恋人になるとばかり思ってたわよ。友達関係でも言えるけどさ、好きな相手ならよく観察するわけだから……相手の良いところとか好きなところとか、言おうと思えばいくらでも言えそうじゃない?」
はあ、と深々とため息をつくあたし。
「それなのに、実際は一目惚れ、なんて意味不明なものが世の中にあるわけよ。あんたは確かにイケメンだろうけどさあ、だからってあんたよりイケメンな人間なんていくらでもいるわけ!サッカー上手いやつも勉強できるやつもいるわけ!実際相手のことよく知らないのに好きだの惚れただのさー。表向き超かっこいいアイドルみたいなやつが実は汚部屋の住人だとか、高校生なのに煙草吸いまくってる不良だとか、キレると超暴力的になる男だったりしたらどうするわけってのよ」
「一目惚れだったの?あんたが俺に?」
「悪かったわね!だから、どこが好きとか言われても本当によくわかんないんだから。強いていえば、あたしが一緒に帰ろうつったのに断ったからムカついたのはあるけど、それだって後付けみたいなもんだし」
「なんじゃそりゃ」
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