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<2・張眉怒目>
まず、確かめなければならないことがある。
それは、西条聖樹と北部稀美が、既に付き合っているのかどうかということだ。
聖樹に訊いたの“稀美のことが好き”というところまで。付き合っているかどうかについては、尋ねる前に逃げられたというのが正しい。
――ていうか、人をフッただけで失礼なのに、ちょっと詰め寄っただけでビビッて逃げるってどーゆーことよ!失礼ちゃうわ!
本人に尋ねれば早いのは確か、なのだが。いかんせん、その日以来あたしは露骨に聖樹に避けられてしまっている状態。稀美に尋ねてもいいが、頷かれても否定されてもムカつくような気がしてしまっているので尋ねがたい。
で、結局考えたことは。あたしのファンを公言している男子をとっ捕まえて話を訊くということだった。西条聖樹は友達が多い。同じクラスの男子とは大体仲良しだし、他のクラスにも友人が多いと訊く。特に、サッカー部でも一緒に活動している連中ならば、より聖樹のことを詳しく知っているはずだ。
休み時間。廊下で彼らを壁ドンして追い詰めるあたし。
「というわけで話しなさい、下僕ども」
「しれっと下僕って言った!?」
「あああ薫子様の冷たい視線!それもそれでゾクゾク来て最高ですけど!最高ですけどぉ!」
目玉をひん剥く男子その一の鈴木と、その二の田中。田中なんぞは少女漫画のヒロインよろしく頬を染めて、腰をくねくねさせるというなかなかのキモさである。
が、このあたしを前にしては、田中のような反応は至って普通とも言えるのだ。学校に通うだけで、全身に感じる熱い男たちの視線、視線、そのまた視線!彼らを惹きつけてやないだけの魅力と色香が自分にあるのは、揺らぎようもない事実なのだから。
しかし、自分は銀行重役の娘。いすれ婿を取ることが決まっている立場だ。彼らはどれほどアピールしようとも、あたしを支配する立場になることはない。むしろ、あたしに踏まれ、靴を舐めることさえ厭わぬ覚悟が必要なのだ。ベッドの上でも彼らがあたしを抱くことはけしてなく、あたしの従順な犬として抱かれるのが運命。それを受け止められる者のみ、あたしの伴侶となる資格があると言っても過言ではない。
ようは。下僕根性染み付いたこいつらの態度は、あたし相手に限定するならば実に真っ当なものなのである。ふふーん、と気分良く鼻を鳴らしてみせる。
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