<2・張眉怒目>

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 それは、とあたしは眉を顰める。  何故、あたしの時はそう言わなかったのだろう。確かに彼はとんでもないサッカー馬鹿だ。サッカー部の活動が忙しいからと言われてしまえば、あたしだって諦めないまでもここまでイラつかされることはなかっただろうに。 「……あたしには、北部が好きだからってはっきり言ったわよ、あいつ。どういうこと?」  思わず二人をにらみつけると、ヒィッ!と鈴木は情けない悲鳴を上げた。田中はといえば、目を潤ませてお祈りポーズであたしを見上げている。もっと睨んで!とでも言いたいのだろうか。 「おおおお俺等にそんなこと言われても!た、ただ、薫子様が“他に好きな人がいるのか”とか尋ねたからってだけじゃないんですかぁ!?も、もしくは本当に最近の最近、北部サンのことが好きになったからとか!とか!」  それは、普通にあり得る。他に好きな人がいるわけぇ!?と詰め寄ったのは事実なのだから。 ――だって、あたしに告白されて嬉しくない男がいるなんて思ってなかったんだもの。断るとしたら、他に好きな人がいる、くらいしか思いつかなかったし。  本当に、なんであんな地味なふとっちょ女のことなんて――と腐りたくなる。  考えても考えても、自分が彼女に劣るところがあるとは思えないのだが。 「あの、つかぬことをお伺いしますが」   そろそろそろ、と田中が手を挙げてきた。 「薫子様、なんで聖樹に告白しようと思ったんです?確かにアイツはかっこいいですけど……イケメンなんて他にもいるでしょ?それに、薫子様なら待っていれば、いくらでも男がホイホイホイと寄ってくると思いますが」  まるでゴキブリホイホイみたいな言い方をしてくれるが、まあ概ね間違っていない。  小学校中学校高校――はおろか、幼稚園の時からあたしはみんなの人気者だった。男の子たちはみんなあたしに熱い視線を向け、当たり前のように“将来お嫁さんになって!”なんて頼んできたものである。いじめっ子のガキ大将さえあたしにかかればイチコロだった。あの手のやつは、強い人間に弱いのだ。こちとら幼い頃から英才教育で、護身術の類も幼稚園の頃からばっちり仕込まれているのだから。  そんなあたしにとって、欲しい物が手に入らなかったことなど一度もないと言っていい。
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