<2・張眉怒目>

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「でも……」  田中が首を傾げた。 「薫子様、サッカー部が終わるのを待っててあげたんですね?うちの部、季節にもよりますけど……ナイター設備あるし、冬場も結構遅い時間まで練習してるのに。それに、最寄り駅が一緒ってことも知ってたんですか、いつの間に?」 「そ、それはその……い、いいじゃないの、それくらい知ってたって!」  面倒なツッコミしてくるなし、と田中の頭にチョップを入れるあたし。田中が若干嬉しそうなのが微妙だが。 ――そうよ。欲しい物が手に入らなかったから拘ってる。それだけなんだから。他に、理由なんて何もないわ。  本気で好きになっているわけじゃない。  むしろ、あたしに本気で惚れるべきは相手なのだ。こっちが先にべた惚れになるなど絶対の絶対、金輪際あってはならないことなのだから。 「と、とにかく!あたしは、北部稀美に自分が負けてるなんてまったく思ってないし!このまま、あの女に勝ち逃げなんてされたくないのよ!あんた達、なにか手を考えなさいよ、あたしのファンなんでしょ!?」 「そ、そんなこと言われても」 「そもそも、多分聖樹のやつと北部さん、たぶん付き合ってもいないですよ?なんで聖樹から、北部さんの名前が出たのか俺等にも全然わかんないんすから。薫子様が詰め寄るから、とっさに適当な名前の女子を言っちゃっただけってことは?」 「それは流石にないでしょ。それならもっとマシな見た目の子を挙げるんじゃなくて?ていうか、西条が親しい女友達の名前でも出しておけばいいじゃない。なんでよりにもよって、北部稀美なのよ。あいつらどっかに接点あったわけ?」 「接点……」  あ、と。鈴木が唐突に、何かを思い出したような顔をした。 「そういえば。うちの部活に、北部さん来たことあるわ。確か、文芸部の取材つってた」 「文芸部の取材ぃ?」 「おう」  そういえば、北部稀美は文芸部所属だったか、と思い出すあたし。 「小説のために、サッカー部の取材したいんだとさ。サッカー部を舞台にしたミステリー書きたいとか言ってたような。ひょっとして、そこで接点が生まれたんじゃね?あいつらのさ」
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