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<1・自信過剰>
「あなたが好きなの、西条くん。あたしと付き合ってくれない?」
その言葉を言うのに、勇気なんて要らなかった。
なんてったってあたしは東野薫子、この中央さくら高校のミスコンで優勝した女。
親は大手銀行の重役でお金持ち。成績優秀運動神経抜群。そんな女に告白されてフるような物好き、いるはずもないと思ったのである。
ところがどっこい。
「……えっと、ごめんな」
あたしが告白した相手――サッカー部のイケメンくんこと、西条聖樹は。しばし困惑した後、頭を下げてきたのである。
「付き合えない。君とは」
「は?」
「他に好きな人がいるんだ」
「はあああああああああああああああああああああああ!?」
思わずひっくり返った声で叫んでしまった。なお、場所は学校の廊下。人気が少ない、とはいえまったく人がいないわけでもない場所である。通りがかった男子二人組が、びっくうううう!と肩を跳ねさせて自分を見たがスルーだ。
人目なんて、気にする必要なんてなかった。なんせ、フられる想定なんて一切していなかったのだから。
「なななななななんで!?ナンデああああああたしよ?このあたしよ!?この東野薫子様を差し置いて他に好きな人とかいるわけえええええええ!?」
「そ、その自信はすっげえな……た、確かに君は美人だとは思うけど」
「じゃあなんでよ!?どこのどいつが好きだってのよおお!?」
肩を掴んでがっくんがっくん揺さぶってやると、イケメンくんは目を回しながら言ったのだった。
「あ、ばばばばっ……お、同じクラスの、北部」
「はああああ!?」
何でどうしてそうなった。あたしは目ん玉をひんむくことになる。
北部といったら、北部稀美しかありえない。よりによって何で自分があんな女に負けることになるのやら。あたしは魂が抜けそうになったのだった。
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