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妖精レヴはいつも一人ぼっち。彼に友達は一人もいません。
何故ならレヴは、夢の世界の妖精だったからです。
一人ぼっちといっても、夢の世界に人間がやって来たのなら、レヴは一人ではなくなります。夢を見ている子供が、時々迷い込んでくるのです。
誰かに出会えたのならレヴは大喜び。おしゃべりしたり、一緒に遊んだりします。夢の中だから何でもできます。レヴは子供と一緒に空を飛んだり、不思議な世界を歩いたり、お菓子を食べたり、動物に変身したり……レヴも子供も、飽きることはありません。
けれども朝は必ずやってきて、人間の子供は目覚めてしまいます。子供が目覚めたのなら、夢の世界にはレヴ一人だけ。そして人間にとって夢を憶えていることは難しく、レヴと遊んだことも、レヴそのものも、忘れてしまうのでした。
だからレヴは一人ぼっち。レヴには一人も友達がいません。
たとえ、以前出会った子供に再び会えたとしても――「あなたはだあれ?」と言われてしまうのです。友達だったはずなのに。
レヴはそれがとても悲しく、そして寂しくて仕方がありませんでした。いっそ、人間の子供が来てもかかわらないようにすれば、お別れの悲しさや一人ぼっちの寂しさも小さくて済むかもしれない――そう思うこともありましたが、やっぱり子供と一緒に遊ばずにはいられませんでした。そうして朝になったのなら、レヴはまた、友達をなくすのです。
そんな寂しさばかりが多い、ある日のことです。
「あなたはだあれ?」
「僕はレヴ、妖精のレヴだよ」
レヴは夢の中で、一人の少女に出会いました。長い髪に沢山くせをつけ、かわいいパジャマを着た女の子です。
「ここは夢の中?」
「そうだよ、一緒に遊ぼうよ! ここなら何でもできるんだよ!」
「それじゃあ、ボール遊びがしたい!」
夢の中で、レヴは少女と一緒にボール遊び。ボールを投げたり、追いかけたり。二人できゃあきゃあ言いながら遊びます。
「夢の中だから、他にもいろんなことができるよ。空を飛んだり、水の上を歩いたり、動物に変身したり。あとはお菓子をいっぱい食べられるし、お姫様にもなれるよ!」
レヴはいままでの子供が望んだものを少女に教えます。ところが少女は。
「私、みんなが外でするような遊びがしたい! 外でいっぱい走ったり、かくれんぼしたりしたい!」
少女が望んだのなら、夢の世界は大きな公園に早変わり。きらきら輝く砂場に大きなお城のようなジャングルジム、不思議な形をした滑り台に虹のシーソー。他にも不思議で面白そうな遊具がいっぱい。おもちゃも沢山あります。ボールに縄跳び、一輪車。バドミントンもあれば地面にお絵描きするためのチョークもあります。
こういった遊びは、レヴも初めて。朝までレヴは少女と遊びました。
少女はとっても楽しそうに遊び続けました。夢の中だから、たくさん遊んでも疲れません。それはレヴも同じで、転んでも夢の中なのでへっちゃら、痛くありません。
そして少女がいるから寂しくありませんが――それも朝までだと思うと、レヴの心の奥底はひどくもやもやしてしまうのでした。
ところが朝になっても、少女はレヴと一緒にいたのです。
朝になっても、昼になっても少女は公園ではしゃいでいます。かくれんぼでレヴが鬼になった時、なかなか少女を見つけられなくて、彼女は目を覚ましてしまったのではないか、と思ったこともありましたが、少女は大きな樹の上に隠れていました。
夜を迎えて、再び朝が来ても、少女はまだ夢の中。お別れがないことはレヴにとってとても嬉しいことでしたが、不思議なことでもありました。
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