竜と宝

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「このまま、死ぬのか。宝をもらう前に死なれても困る」  ダルピオスは熱で紅潮したシェイリの顔を覗き込んだ。人間は簡単に死ぬ。 「ただの風邪でございます。すぐに元気になります。ダルピオス様と約束した以上、必ずお守りになります」  初対面で気を失っていた侍女、ナーヤはせっせとシェイリの世話を焼いている。  ダルピオスの目から見ると、とても元気になるようには見えない。こんな子供が約束を守って、王になることなどあるのだろうか。まあ、暇つぶしにはいいかもしれない。  そう思っていたら、次の日にはシェイリは元気になっていた。 「ダルピオス、そなたは人を乗せて、空を飛ぶことができるか」  竜に対して偉そうだ。 「ああ」 「何人まで」 「十人ぐらいは軽いが、輿でも付けなければ、転げ落ちるぞ」  シェイリは顔をしかめた。 「ここから、レンド山脈まではどのくらいで行ける」 「半日」 「よし、それでは明日、出発することにしよう」 「誰が?」 「妾たち全員だ」 「は?」  馬鹿かと言おうとした時、先にナーヤが口をはさんだ。 「姫様、ナーヤが輿を探してきますので、お待ちくださいませ」 「いや、あの者たちを成敗するには早く辺境伯と合流せねばならぬ」  詳しく事情を聞くと、反逆者はシェイリの腹違いの兄、ドルガ。父王と王妃、皇太子を殺し、城を占拠したらしい。辺境伯はシェイリの伯父で必ず味方になってくれるという。  とりあえず、ナーヤが輿を探しに近くの村に行くことになった。 「今夜は携帯食じゃなく、美味しいものを出しますからね」  元気よく出発して行った。 「追っ手がいるのではないか。大丈夫か」 「大丈夫。ドルガ兄様は自信家だから、妾が必死に逃げ惑っていると思ってる。それより、自分の戴冠式をどうするかで頭が一杯のはず。だからこそ、早く反撃しなくては」  そう言うと、シェイリはパタンと横になった。 「疲れたから、眠るわ。ナーヤには内緒ね」  あっという間に寝息を立て始める。  ダルピオスはその顔を覗き込んだ。昨日の赤い顔とは違って、逆に青ざめて見えた。
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