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宝のためか、退屈しのぎのためか、どちらにしても軽い気持ちだったのに、ダルピオスは背中のシェイリのことが気になって仕方なかった。あの後、眠りながら、涙を流す姿を見たせいだろうか。両親を殺されてすぐなのだ。それなのに、自分の意志で竜を頼り、反撃しようとしている。
空を飛ぶスピードはこのままで大丈夫だろうか。耳を澄ますと、話し声が聞こえる。
「ナーヤ、恐れるな。ダルピオスは妾との約束を破るような竜ではない。勝利は近づいているのだ」
シェイリはどこまでも強気だ。
ダルピオスは人間のように笑った。
辺境領では弓矢で迎えられたが、シェイリの姿に気がつくと、すぐに歓迎された。竜を従えた王女の姿に騎士たちは感動しているようだった。
すぐに首都へ進軍することとなった。シェイリたちは馬車。ダルピオスは上空を飛ぶ。飛びながら、下の会話に耳を澄ませた。
「ドルガに加担している貴族の軍など腰抜けばかり。すぐに蹴散らしてやろう」
辺境伯は意気揚々としていた。
「それにしても、シェイリ。よくやった。まさか、竜を味方につけるとは」
「妾に王の素質があるからでしょう」
「そうだな、まったくだ。ドルガを打ち破ったら、お前が王だ」
態度を見る限りはシェイリを傀儡にして、自分が実質的な王になるつもりではないらしい。
ホッとする自分が不思議だった。
そして、辺境伯の言う通り、ドルガは弱かった。竜の姿に怯え、辺境伯の軍勢に逃げ惑った。後にこの反乱はドルガの五日天下と呼ばれるようになった。弱いくせに天下を取れたのだから、本人は満足だったかもしれない。
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