竜と宝

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 人の時間は短い。  王配が亡くなったという手紙は文字が震えているようだった。そこではじめて、シェイリが自分で書いていることに気づいた。次の手紙には退位して、息子に王位を譲ったとあった。  その次の手紙はなかなか来なかった。  毎日、毎日、人の気配を探った。一日、一日をこんなに長く感じたことはなかった。  城に飛んで行こうかとも思った。  もし、シェイリが手紙を書けない状態だったら。そう考えると、ダルピオスは勇気が出なかった。  竜のくせに。長く生きてきたくせに。  今まで蓄えてきた宝物を見ても嬉しくなかった。黄金を見ると、シェイリの髪を思い出した。  思い出が宝物なのかもしれない。  覗き込んだ寝顔は可愛かった。 「出でよ、出でよ」  人の気配としわがれた声にダルピオスは飛び起きた。  そんなはずはない。知っている声と違う。そう思っても、気は焦った。  息を止めて、洞窟から顔を出す。  小さな老女が腰に手を当て、立っている。 「宝を渡しにきた」  しわがれた声でも偉そうなのは変わっていない。 「シェイリか」  老女はうなずいた。 「ダルピオスよ。今日から妾はここで暮らすことにした」 「王がこんな洞窟で暮らすというのか」 「元王だ。あの時、身一つでも眠れたんだ。大丈夫だろう。それに、今回は供の者が荷物を運んでくる」  美しかった金の髪は白髪になっている。  ダルピオスの視線にシェイリは気づくと、笑った。 「黄金で無くなったが、許せ」 「いや、白金のようだ。待った甲斐があった」  ダルピオスの目にはシェイリが輝いて見えた。 「口が上手くなったな」  ダルピオスがそっと前脚を伸ばすと、シェイリは抱きついた。
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