番外編9:脱がせたい男VS脱ぎたい男(1)

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番外編9:脱がせたい男VS脱ぎたい男(1)

【前書き】 こちらのお話は【番外編8:脱がせたい男VS…(アオイ×タロー)】の続きのお話です。 飯島の選んでくれた服を纏い、アオイとのお出かけに向かったタロー。 そんなタローの服に激オコなアオイ。 そんな二人による戦いにならないVSです。 もちろんR18になっております。 それでは、少し長いですが……どうぞ! ----------- 1:イケメンZ世代(゜o゜ 「ねぇ、さっきからずっと何見てんの?何か連絡でも待ってるの?」 「ん?」  時刻は夜の十時。  現在、飯島は恋人と共に、一周年の記念日をつつがなく過ごしていた。  その日は、飯島にとって完璧な一日だった。  女子の好きそうなデートスポットを余すところなく回り、ランチも評判の店を予約した。前から欲しがっていたプレゼントも最高のタイミングで手渡したし、夕食は……少し値は張ったものの最高のフレンチを用意した。  そして、現在。  飯島は恋人と共に二人で並んで夜景を見ていた。最高、完璧、天元突破。これ以上の記念日デートがどこにある?  そう腹の中で飯島が自画自賛していた、その最中の事だ。恋人から少し不満そうな声が上がったのは。 「ねぇってば」 「ん-?別に、何もないけど」 「別にって……」  完璧だ。重箱の隅を突こうとしても何も出ない 「今日、ずっと上の空だったよね。私と一緒に居るの、そんなに楽しくない?」 筈だった。 「いや、そんな事ないよ。急にどうした?」  夜景もそこそこに、スタスタと車に戻る彼女の、その酷く不機嫌そうな声に飯島は先程まで見ていたスマホから顔を上げた。すると、そこには先にさっさと自分だけ車へ乗り込む恋人の姿。  あれ、何かミスっただろうか。  そう、とっさに飯島は思案するが、その日一日を思い返してみても自分に落ち度は見当たらない。飯島もすぐに後を追い、運転席へと乗り込む。 「おい、どうしたんだよ」  ひとまずワケを聞いて恋人の機嫌を取らねば、と声をかけてみるものの、そこには此方を一切見ずに深い溜息を吐く恋人の姿がある。いや、何だ。これは。自分にいはミスなど欠片も無かった筈だ。 「何かあればずっとスマホ見て……誰か、気になる人からの連絡でも待ってる?……なんか、全然デートに集中してないし。私と居ても楽しくないんでしょ」 「……そんなワケないだろ」  あった。  飯島はスマホをポケットに仕舞うと、心の中で軽く舌打ちをした。まったく、こんな初歩的なミスをするなんて。  今日は恋人と自分の、付き合って一周年の記念日だ。そして、もう一つ飯島にとっては気になる予定がある。 ------ タイトルにも書いた通り、明日は脱毛サロンの推しスタッフのアオイさんとお出かけの日です! わーーーーーい! ------  職場の先輩である宮森タローが、推しの“アオイさん”と、初めてお出かけする日だ。飯島は昨日から何度も何度も見たブログの文面を頭の中に反芻しながら、思わず零れそうになる溜息を口の中で噛み殺した。  そして、改めて思う。  一体何をやってるんだ、と。  つまり、自分は全く関係ないイベント事に気を取られ一日中、スマホを見返しては妙にソワついていたのだ。そして、夜になったら夜になったで、昼間以上にスマホをチェックしていた。 ------ 皆さんにお出かけがどうだったのか報告しに来ますねー! ------  コタロー日記が何か更新されていないか。そんな、どうでも良い事ばかりを気にして、付き合って一年の恋人との一日を蔑ろにして過ごしてしまった。 「ごめん。仕事でちょっと気になる案件が残ってて。それで……」 「ウソ。あんな嬉しそうな顔でスマホ見といて、仕事って……あり得ない」 「っぅ」  あぁ、完全に見破られている。  そして、そんなに嬉しそうな顔で自分はスマホを見ていたのか、と飯島は頭を抱えたくなった。でも、言われてみれば思い当たる節が、無いワケではない。夜は更新を楽しみに何度もコタロー日記を覗きに行った。  じゃあ昼間は?  昼間は、そのブログの執筆者である宮森タローも“アオイさん”とのお出かけの最中だ。もちろんコタロー日記が更新されるなどとは露程も思ってはいない。それなのに。飯島がコタロー日記を何度も覗いてしまった理由。それは――。 ------ で!それを、今日職場のイケメンZ世代君に話したら明日の服を、今日帰りに一緒に選びましょうかって言ってくれて! でも、どうせ仕事帰りに開いてる店なんてないからなーと思ってたら、ギリギリ駅中のユニ〇ロが開いていたので、応急処置の服を選んで貰いました! ひゃー!久々のユ〇クロで緊張したー! イケメンZ世代君、ありがとう^^ 今度、お礼に好きピのキーホルダー持っていこ!(布教しただけじゃん!) では、また明日の夜! ------ 「……仕事だよ」 「もういい。もう帰ろう。このまま一緒に居たら……多分あんま良くない事になりそう」  最悪だ。  何の問題もないと思っていたのに、まさか職場の先輩のブログに自分が登場したのが嬉しくて何度も何度も見返していたなんて、言えるワケがない。というか、もし言ったとしても、きっと信じては貰えないだろう。  むしろ言い訳がましく聞こえて、更に拗れる可能性だってある。  飯島は「わかった」と静かに答えると、再び自然とスマホに手を伸ばしそうになるのをグッと堪えた。今は堪えろ。どうせ今日はこのまま彼女を駅まで送って終わりだ。ブログは、帰ってから確認すればいい。 「運転しながらスマホ見ないでよね」 「……時間を確認しようとしただけだ」 「ふーん」  信号が赤になった瞬間、無意識にスマホに手を伸ばしてしかけた自分に、飯島は天を仰ぐしかなかった。スマホに触りたい。コタロー日記のトップページで更新ボタンを押して、新着記事が無いか確認したい。 「青だけど」 「……はぁ。分かってるよ」  あぁぁぁっ!くそっ!マジで気になるっ!
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