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睡眠薬を震える手でもどかしくもう片方の手のひらに載せて、水で一気にあおる。
這うようにして自室のベッドに横になり、目を閉じて祈りを捧げる。
……夢でいいから、どうかまた、Aちゃんに会えますように……。
病室で眠り続けている友人の顔を、硬いパイプ椅子に腰かけて見下ろす。
最近はよく眠れていると言っていたのはつい一週間ほど前のことで、けれどそれは、どうやら薬によってであったらしい。色のない顔で、無表情に息をしている。
腕時計を確認して、そろそろ仕事に戻らなければと腰を浮かせた時だった。
「Aちゃん……」
彼女の口からそんな言葉が漏れ、わたしは少しぎょっとして彼女の顔を見つめた。
相変わらず顔色は真っ白なのに、微かに口角が上がっているように見えた。
「……夢でも見てるのかな」
ちゃん付けで呼ばれるなんて、子どものころ以来だった。
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