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「ほら、跳んで!跳んでしまえ!」
耳が痛くなるような悲鳴が、遠く心地よい音に変わっていくように感じて、視界が白い光に包まれた。
あまりの苦痛と恐怖に瑠璃の精神が崩壊し、肉体も活動を止めた。
その瞬間、確かに瑠璃は死んだ。
「逝ってらっしゃい、瑠璃…」
気が付くと瑠璃は足もとに横たわっていた。
その肢体は拷問前の白く滑らかな肌をしている。
椅子と机にそっとカバーを掛けて隠す。
黒スーツたちは、茫然としてまだ状況を認識しきれていない。
浄一は優しく瑠璃を抱き起す。
「瑠璃、また会えたね」
美しい瑠璃の頬にキスをした。
「戻った・・・のか?」
黒スーツたちの意識がハッキリしてくる。
「ええ、外の世界は、一日前にリセットされてるはずです」
「ご協力感謝する」
黒スーツたちは慌ただしく出ていった。
目覚めた瑠璃には拷問の記憶がない。
苦痛と恐怖が限界を超えたとき、断末魔の絶叫とともに全生命力を異能に変換して絶命する。
発動した能力は、無惨な虐待の痛みと悲しみをリセットするために、24時間程度の時間を巻き戻す。
消滅した一日の記憶を保持できるのは、拷問者である浄一と、その共犯者だけなのだ。
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