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「よかったわね、伸一さん」
心臓がドクンドクンと打ち始めた。ココはミャーと鳴いて、俺の膝に乗ってしまった!
青ざめた俺の顔を見て、由香が驚いた。
「どうしたの?」
「ちょっと睡眠不足なんだ」
由香が、ココを膝からどけてくれた。それから、隣の六畳間に布団を敷いて、「一時間横になったら」と、枕元の目覚まし時計をセットして、部屋を出て行った。
俺は、背広の内ポケットから大好物の板チョコを取り出し、銀紙を破って、二個口に放り込んだ。溶けていく甘さが、俺を癒してくれた。横になって目をつぶると、いつの間にか眠ってしまった。
目覚まし時計がチチチと鳴り、目が覚めた。枕元に置いたチョコをもう一個食べようとすると、誰かがチョコを食べた形跡がある。しかも、割らずにかぶりついたようだ。いったい誰が……と思っていると、隣の部屋から「キャーッ」と悲鳴が聞こえた。
あわてて飛び起きて、隣の部屋に行った。
「どうしたんだ?」
「ココがおかしいの。急に落ち着きがなくなり、私の膝から飛び降りて震えだしたの」
「お父さんとお母さんは?」
「さっきご近所から急用だと電話があって、出かけているの」
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