3 年下カレが甘える時

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「もやもや?」 「あの人が亜美さんと親しそうな姿を見て、胸のあたりにひっかかるものがあったというか……僕と一緒にいる時とは違う亜美さんをこの人は見てるんだな、羨ましい、と思ってしまって」  壮真君はそこで言葉を区切る。私は壮真君の手を握り、そっと口を開いた。 「それは、壮真君がヤキモチを妬いたってこと?」 「言葉にするとそうですね。でも、もっと複雑と言うか……亜美さんが、僕の恋人だってもっと多くの人に知って欲しいと思ったんです」  壮真君の手が熱くなっていく。私も、恥ずかしくなってきて何だか変な汗が噴き出しそうだった。 「そう、だったんだ……でも、私も同じように思う時あるから」  私よりもファン歴が長く壮真君の事について詳しい人がいると悔しいし、解説の仕事をしている時のアシスタントの女性が可愛いとハラハラと不安になる。でも、これは私だけが抱いているものだとばかり思っていた。壮真君も同じような事を思う時があるなんて。体がカッと熱くなっていく。私は壮真君から手を離して、席を立った。 「……亜美さん」  台所でお湯を沸かそうと準備を始める私の背後にぴったりとくっつくように、壮真君が立つ。 「どうして赤くなってるんですか? ……教えて」  私の真っ赤になっているであろう耳元に唇を寄せて、壮真君がそう囁いた。くすぐったさが体中を駆け抜けていって、力が抜けてしまいそうになる。 「亜美さん?」 「だって、変な事言っちゃたんだもん。恥ずかしいよ」  釣られるように溢れた、むき出しの独占欲。そんな事を言ってもどうしようもないって分かっているのに。 「こっち向いて」  壮真君に言われるがまま、私は正面を向く。私の頬を、壮真君の大きな手が包み込んだ。 「亜美さんの、嘘をついたり、取り繕うとしないところが僕は一番好きです。あと、とても素直なところ」  私は壮真君を見上げる。壮真君は優しい笑みで私をじっと見つめている。耳をくすぐるような、表裏のないカレの言葉。嬉しいけれど、それ以上に恥ずかしくて仕方ない。私が「やめてよ」と目で訴えると、カレは少しだけ屈んで、顔を近づけてきた。 「……ん」  そのまま、唇同士がそっと触れ合う。少し離れて、壮真君は私の腰のあたりを抱き、今度は深くなっていくキス。私はカレの背中に腕を回して、シャツをぎゅっと掴む。壮真君は手のひらで腰を撫でて、私の体をカレ自身にぴったりとくっつくように抱き寄せる。口づけは激しくなることはなく、焦れったく、穏やかに絡み合う。 「……足りないな」  唇が離れた瞬間、壮真君はそう囁いた。 「……ケーキ買ってあるよ?」 「後にしましょう。今は、亜美さんがいい」 「ひゃ……っ!」  壮真君の手が、私のカットソーに滑り込み、キャミソールをめくりあげる。熱くなった手のひらが私の背中をじっくりと撫で上げていく。くすぐったいのに、それをずっと望んでいた自分がいる。 「壮真君、ここ、台所だってば」  制止しても、カレの手が止まることはなかった。ぞくぞくとした感覚が体全体を包み込んでいく。私は「だめ」「やめて」と抗うけれど、その声は次第に甘くなっていって説得力なんてない。壮真君の熱くなった手が、敏感になった背中やわき腹の素肌を撫で回す。胸を押し返そうとしたら、壮真君は屈んで、私の耳を食んだ。 「んん……っ」  唇、呼吸まで熱い。カレの余裕がなくなっていることに気づいた。 「僕、飢えてるんです。……亜美さんが欲しい」  耳元でそう囁かれると、私の体から力が抜けていってしまう。抵抗しているのをやめたのがカレにも伝わったみたいで、壮真君の手は背筋を伝い、下着の金具を外してしまった。 「……ここで?」  寝室でもないところで求められるのは生まれて初めて。私が見上げるように壮真君にすがると、カレは「仕方ないですね」と私を抱き上げ、寝室に向かった。冷蔵庫の中にあるケーキ、有名なお店から並んで買ってのだけど……私も、今はこっちがいい。ベッドに横たわると、壮真君の首に腕を回して大きく息を吸った。久しぶりに会う壮真君の匂いが胸いっぱいに広がった。それが嬉しくて抱き着いていると、壮真君は離れてしまった。 「あ……」  私が名残惜しくて手を伸ばすと、壮真君は少し意地悪そうな笑みを見せた。そんな表情を見るのは初めてだったから、私の胸が強く脈打つ。 「後でいっぱいぎゅってして?」  そう言って、シャツのボタンを外し、眼鏡を外す。カレがもっといっぱい、私の事を求めてくれる合図。怒っていたのもあっという間に水に流され、私もカレに溺れるように夢中になっていった。
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