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かくて、長老は語る
むかしむかし。ある、満月の晩のこと。
『長老さま、何かお話を聞かせて!』
森の小さな泉で喉を潤していた長老は、駆け寄ってきた子どもたちにせがまれ、目を丸くしました。ある子どもが握っている、真っ黒い石でできた細長い棒に気づいたためです。
小枝ほどの長さをした棒は、とてもくたびれて、傷だらけでした。長老の、灰色にくすんだ体と同じくらい。
『おお、おお……その棒をどこで見つけた』
『鳥がつついて食べてた魚の、腹の中!』
ひときわ大きな体の子が、得意気に鼻を鳴らします。長老は、差し出された石棒を受け取り、『なるほど』と頷きました。
長老は石棒を縦に、横に振り、軽々と閃かせた後、放り上げて地面に落としました。切っ先は、森の奥を示しています。
『ずいぶん昔、うんと遠い地で失くしたものだ。……ちょうどいい。今日は、この石棒にまつわる話を語ろう』
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