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「こんばんは。このプールは誰もいないから、まるで貸し切りのようですね」
「そうですね。平日のシティホテルは都市で一番静かな場所の一つだと思います」
と清治はそう答えながら、私のようなきちんと働けないやつは、平日にシティホテルに泊まるだろうと考える。
美人は水風呂に入った。清治は彼女が奇跡的なボディをすることに気付いた。もしこの美人は休日にプールに来たら、プールに居る人たちは、あちらもこちらも、男性も女性も彼女に視線を引かれるはずだ。
健康的な日焼け肌に細くて長い首と四肢、この美人はまるで人形のようで、男に簡単に持ち上げられるほど痩せている。更に不思議なのは、体と釣り合わないあの豊かな胸だ。あの雫のように綺麗な放物線を描いた胸は、長くて深い谷間を作って男性を悩殺する魔力を放っている。
「平日にシティホテルのプールを利用する客は珍しいですね。東京へ出張してきましたか?」
「いいえ……家は自分の店を経営しています。今日は丁度休みです」
清治は嘘を吐いた。実は、友達にも自分の仕事と強迫症などを言うことは滅多にない。
「私も今日休みだから、シティホテルへ来てちゃんとリラックスしようと思ったわ」
水風呂に寝た美人は欠伸をした。彼女が大人っぽくて穏やかな魅力を持つから、多分少し年上だと清治は考える。
彼は緊張して、頑張って話題を見つけてこの美人と喋りたい。
「平日のホテルはいいですね。しかし、明日は現実に戻らないといけません。やっていない仕事はまだ沢山あります」
「でも、自分の店があるっていいですね。羨ましいわ」
全然よくない……家族と一緒に働くのが嫌いだと清治は思う。
清治は相手がどの仕事をするか知りたい。どう聞けば失礼にならないか思考している。
「私は通訳ですから、時々海外出張をする必要があって本当に大変ですね!」
と清治はまだ聞かないうちに、美人は仕事を教えてくれた。
「でも、海外出張すれば、沢山国へ行けるでしょう。素晴らしいと思いますね」
「お金を稼ぐ時間がありますけど、使う時間がありませんよ……景色が美しい国へ行っても」
仕事の話題を続ければいいかどうか、清治は分からない。しかも、両親のお金を使ってシティホテルの部屋と施設を楽しむ彼はかなり不安に感じた。
プールはまた水風呂の小さな音しか聞こえないようになる。清治は傍の美人に視線を向けて、せっかくの出会いを無駄したくない。
「私は清治と言います。お姉さんの名前は?」
「れいなでいいですよ」
とにかく、清治は美人の名前を聞いて、沈黙を破った。
「れいなさんは何ヶ国語が話せますか?」
「うーん、英語、スペイン語、フランス語、アラビア語です」
「凄いですね! 私は英語と中国語、二ヶ外国語が話せますけど、中国語は日常会話レベルだけだ」
「中国語の文字は難しいでしょう。清治さんも頭がいいですね」
褒め合うことで、二人の気分は盛り上がった。だが、れいなさんが私がちゃんと働けないことを知ったら、多分話したくないだろうと清治は思う。
「私はイギリスのウィンチェスターで一年間語学留学していましたよ」
「本当ですか? そこはどのような町ですか?」
清治は喜んでれいなに留学とブリテン諸島を遍歴した経験を伝えた。レイナは清治が最北端のシェトランドとオークニーで、海風の匂いに鼻をくすぐられた思い出を聞くと、次々と質問をした。清治はだんだん自信につけて、頭にも強迫観念が浮かぶ余裕がなくなった。
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