強迫性障害、パンデミックと再会

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 清治は暫く羽を伸ばした後、強迫症状が少し改善した。彼は頑張って小説を書き続けた。れいなさんを参考にして、知性的で頭がいい、世界各地で巡回公演を行う女性音楽家を作った。  だが、清治は頑張って創作する時、強迫症がまた脳疲労のせいで酷くなってしまった。呪われたせいで糞尿を食べたり、亡くなった親戚を犯したりするなど怖いイメージが絶えずに浮かんでくる。 (誰かが私の小説を読んで励ましたら、強迫症と闘う勇気をもらうだろう……) とそう考える清治はスマホを取ってれいなにメッセージを送った。 「れいなさん、最近どうですか? 私は動物を世話するだけじゃなく、小説を書いて文学賞に応募したいですから、疲れましたね」 「清治君、こんばんは。前週シンガポールへ出張して、昨日帰国したばかり。私も疲れたわ。小説を書くのが好き? どういうテーマ?」 「実は、れいなさんが世界中飛び回ったことを聞いた後、良いアイデアを生み出しましたよ。主人公は女性の歌手で、れいなさんのような多言語話者です。彼女は巡回公演を行う時に、マフィアの犯罪に巻き込まれるという」  強迫症のせいで、清治は毎日千字、二千字ぐらいしか書けない。だが、彼はいつも創作の悩みを友達に打ち明けられない。 「そう言ってもらうと嬉しいわ! 小説が出来た後、見せてもいい?」 「喜んで小説を送りますよ。アラビア諸国を小説の舞台にしたから、聞きたいことがあります。ムスリムは本当に外国人と他の宗教が嫌いですか?」 「実は、ムスリムは私たちの思ったより心が寛大よ。アラビア諸国では、一つ町でキリスト教会とイスラム寺院が見えることはよくある。お互いに尊重すれば、一神教同士も仲良く暮らせるわ」  邪術と呪禁師のイメージはまた清治の頭に浮かんだ……強迫症はまるでハリー・ポッターのブギーマンのように、いつも姿を変えて現れる。今、清治は神社、仏閣、寺院、教会、モスクなどを聞くと、邪術と呪禁師を連想することになった。  清治は拳を握って、メッセージを返信することに専念しようとした。 「でも、アラビア諸国を言えば、独裁とか成金とか、あまり良くないイメージですね」 「うーん……アラビア諸国以外、私はイスラエルに行ったこともある。実は、沢山の偏見は、アラビアと戦っているユダヤ人が操るアメリカのメディアが作られたもの……ユダヤ人はみんな悪いという意味じゃなく、アラビア人と一緒に平和に過ごしたいユダヤ人もかなりいる。でも、人間は本当におかしい。言語も宗教も文化も戦争の言い訳になる」  清治の周りには、ここまで見聞が豊かな友達がいない。好奇心旺盛な清治は勇気を持って彼女に食事を誘った。 「れいなさん、アラビア諸国のことをいっぱい話したいですから、十二月に時間があれば、一緒に食事に行きませんか?」  清治は緊張になって、スマホを見つめて返信を待っている…… 「来週、また海外出張するから、年末まで忙しいわ。でも、来年の三月に長い休みを取るから、花見に行って食事しよう」  思ったより順調だった。清治は震える指で入力し続ける。 「私も花見に行きたいです。渋谷には美味しい中華料理店がありますよ。大学の中国語先生にあの店に連れて行ってもらいました。中華料理が好きですか?」 「好きだわ。案内してほしい。三月になるとまた連絡しよう」  また美人のれいなさんと会う時、どんな服を着てくるか、どんな物語を言ってくれるか、と清治は期待を膨らませる。強迫観念がれいなさんと食事する時に邪魔しないように、と清治は秘かに祈っている。
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