強迫性障害、パンデミックと再会

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   ただし、二人は一緒に花見に行く約束は、果てなかった。コロナウイルスが大流行しているせいで、スペインに滞在しているれいなは帰国できない。 「今、感染者は山ほどいますから、私は全然出かけられません。れいなさんも気を付けてください。頭のいい淑女と再会する日を待っていますよ」 「心配してくれてありがとう。出かける時、ちゃんとマスクをかけるわ。でも、ヨーロッパ人はマスクをかけたくないなんて嫌だわ!」  光陰矢の如し。清治はれいなと出会ってから既に一年経った。二人は会えなくても、メールで世界各地の旅行の写真と物語を分かち合い、偶に悩みを話し合った。 (夏になると、ウイルスが収まればいいな……それなら、またれいなさんと会える) 「ヨーロッパ人の考えは理解できないな、自由は命ほど大切じゃないのに……でも、れいなさんはマスクをかけると、その美しい顔が見えなくなって残念ですね」 「清治君、言葉は上手ね。スペインには私より美しい女性沢山あるわ」  清治はこの年上の女性に好感を持っている。れいなは理想的な大人――知性的で美しい、仕事ができる女性だから。だが、今の自分は彼女に全然相応しくないと清治が分かっている。 (れいなさんと再会する時、相変わらず仕事ができないなら恥ずかしい。文才を持つことを証明しよう! 小説家としてれいなさんと一緒に食事したい)  三年間心理療法を受けた後で、彼は宗教に関わる物事を聞いても恐れなくなった。しかし、長期間外出できないせいで、清治の強迫症が更に悪化してしまった。小説を書く時、清治は嫌なイメージが出る同時に、正しく文を書けるかどうか確認できない。そのせいで、一つの文を五回以上読まないと、次の文を書けない状況はよく起こった。  清治は二編の小説を完成して投稿したが、一回選考で落ちてしまった。しかも、強迫症に苛まれた彼は、詳しく小説を直す気力がなくて、新しい作品だけ書きたい。だが、これで脳の負担が一層大きくなる。 「ハア、先ずはれいなさんが紹介してくれた観光地の写真を見て気分転換しよう……えーと、パレスチナ、ベツレヘム……」  ベツレヘムのキリスト教会、クリスマスツリーの写真が出た。清治が気分が良くなると感じた。この時、彼がツィーターを開けると、あるメッセージに目を引かれた。 「ユダヤ人の学者モシェ・フェルデンクライスは強迫的な行為について、人間はいつも強いてある事をやらせる/やらせないと考えた」  アルゴリズムで現れたメッセージを読むと、清治はフェルデンクライスが創った心理療法を検索し始めた。このメッセージが強迫症が治ったきかっけになるとは全然思わなかった。
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