強迫性障害、パンデミックと再会

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 2022年の夏、コロナウイルスが徐々に収まっている。強迫症が治った清治は短編小説で受賞して、書籍化の準備をしている。喜びを分かち合うために、れいなが十月に帰国した際に、清治は彼女に食事を奢ろうと決めた。 「清治君、また会えたね。この中華料理店はとても大きくていいわね」 「お久ぶりです……!れいなさん、最近大丈夫ですか?」  渋谷でれいなと再会した時、清治の目に入ったのは、三年の前より遥かに老けて、目尻のしわができた女性。パンデミックの期間、心身ともに疲労困憊するようだった。元気な顔をしている清治と逆になった。  清治はフェルデンクライス・メソッドを学んだ後、強迫症はようやく治った。彼は柔軟体操で体をリラックスして自分を観察した――体がどのように動くか、強迫観念が浮かんで強迫行為をしたらどう感じるか、繰り返して観察した。  その過程で大変な困難にぶつかったが、清治はれいなさんのメッセージを読むと、やり続ける力を得た。と半年間自分でこの心理療法をやればやるほど、清治は不安と痛みが徐々に消えて、頭の回転を把握できるようになった。 「先ずは店に入ってね。大丈夫よ」  座った後、れいなは竜の模様が付いた茶碗を持ち上げて、プーアル茶を飲んだ後、この三年間の出来事を話し始めた。 「実は、清治君と出会った前、体の調子がずっと悪かった。私は八年間の仕事のストレスで不眠、胃痛、免疫力低下……毎年、酷い風邪に罹ってしまった……」 「全然想像できなかったです。プールのれいなさんはそんなに元気に見えたのに……」 「あの時、もう給料が高い仕事をやめて休養中だった。シティホテルに泊まったのは、お金持ちがどんな生活を送るか知りたかったから。ごめんね。何も言わなかった」 「大丈夫ですよ……私は家に住んでいましたが、あまりペットショップの仕事を手伝わなかったです」  清治はやっと真実の自分を打ち上げて、ほっとした表情を作った。今、不潔と死亡に関わるイメージは、彼の脳の背景になるだけで、あまり影響しない。 「あの時の『出張』は、全て海外旅行だった。その後、私は友達と一緒にスペインに住んで、小さい通販会社を作って日本人に高級のボディソープと化粧品を売った。しかし、コロナ禍が起こると、みんなが稼がなくなって私のものも全然売れなくなってしまった」  れいなは髪を弄った。清治はこの美人の鬢には白髪が一本生えたことに気付いた。彼の頭が強迫観念に占められた頃、これほど素晴らしい観察力を持っていなかったのだ。 「私、清治君の思ったほど優秀な人じゃないわよ。失望したの?」 「いいえ、全然。実は、私はずっと強迫症に翻弄されて、きちんと働けなかったし、創作も順調に進めなかったです」  清治は本当の自分を隠し続けたくない。その暗い顔を見てれいなを励まそうと思うだけだ。心理士も彼も強迫症が治ったのは奇跡だったと考える。半分ぐたいの患者は寛解しても再発する可能性が高い。 「楽観的で明るいれいなさんと出会わなかったら、前に進む力を得られなかったです。アラビアとイスラエルの見聞を言ってくれたおかげで、ユダヤ人のフェルデンクライスの本を見つけて強迫症を治しました。小説賞の表彰楯はれいなさんに贈るはずです!」  れいなはまた日の如く暖かい笑顔を作り、清治が好意を抱くことがはっきり分かった。 「清治君、ありがとうございます。実は、私が落ち込んだ時、憧れてくれた人がいることを想うと、気力が回復できたわ……もうヨーロッパを離れて日本へ戻ろうと決めた」  それは、れいなさんが私と恋人になる可能性があるという意味か、と清治は考えて緊張になった。
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