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「地方に異動になる?」
「そう。本当にごめん」
血相を変えて帰ってきた雅也くんは、スーツに着替える前に、ひざまずいて謝った。
「まったく異動しないって聞いてたのに、スキルアップ研修みたいなやつで半年くらい」
「え、あ、そう、なんだ」
ーーーあんなに深刻な顔していたから、てっきり永年とかなのかなと思ったけど、たったの半年……
それなら、なんとか耐えられるかも?
「急な話で、明後日にはその新しい勤務先に向かわないといけなくて」
「えっ……」
「ほんと最悪だよな。だから、今のうちから充電させて。苺花のこと、ぎゅってしたい」
「ん。いっぱいして」
膝を立て、両腕を広げた雅也くんの中にすっぽりと収まり、わたしは顔を上に向け目を閉じる。
柔らかく、温かい感触が、唇に感じる。
雅也くんとするキスがすき。
付き合う前から、何度もしているのに、飽きることがない。
「苺花、くち、あけて……」
「はぁ……ん……」
少し開けた口の隙間から、熱いものがわたしの舌に絡みつく。
その熱さにクラクラし、さらにはザラザラした感触に腰がゾクゾクして、わたしはいつも骨抜きにされてしまう。
ーーー雅也くんは、本当にわたしを誘惑するのがうまいひとだ。
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