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てっきりテイクアウトして帰ると思い込んでいたから、ここで話して行こうと言われたときにはさすがに動揺した。
「よかったら、もし理由があるなら聞かせてくれる? さすがに会社じゃ話しづらいかと思って」
そんな気遣いまでしていただけるとは。
「あ、の、ものすごくくだらない理由って思われても仕方ないので、大変恐縮なんですけど」
「うん?」
「実は今、彼氏が地方に異動になって、しばらくメッセージでしかやりとりしてないんです。1年はかからないっていう話で、そんなのあっという間だと思ってたんですが、なんだかんだで寂しくて」
さすがに、キスができないのが一番寂しく感じてる理由とは言えなかった。
「なるほどね。そういえば、同棲始めたばかりって言ってたね。まだまだ楽しい時期だよね」
「そうなんです。お恥ずかしい」
「いいんじゃない? すきなひとが原動力になるって、別に恥ずかしいことじゃないと思うけど」
「本当ですか?」
「うん。恋人が槙原さんにとって一番の癒やしなんだね。おれは食べ歩きと掃除だけど」
目から鱗だった。
口に出してみて気づかされる、まさか自分がこんなに雅也くんの存在を重要に思っていたなんて。
それに、そんな自分を第三者の方に認めてもらえるとは予想外だった。
「週末とか、彼氏に会ってくれば? 有休使って長めにでもいいし。少しは気分も変わるんじゃないかな」
「そうですね。坂田さんに話聞いてもらえてよかったです。ありがとうございます」
「いいえ。後輩の面倒を見るのが、先輩の務めですから」
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