アプリコット

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坂田さんに話を聞いてもらってから数日後の週末。 わたしは、雅也くんの元へ行くことを決行した。 行くことに関して、特に連絡はしていない。 一目でも見られればそれでいいし、顔を合わせられなくても、息抜きの観光になればいいと思った。 早朝、新幹線に乗り込む。 2時間もしないうちに、目的の駅に到着してしまった。 ーーー案外、あっという間に着いてしまうものなんだな…… 駅のホームに降り立ち、改札を出て駅前をうろつく。 来たはいいものの、何からしようか悩んでいると、とある声が耳についた。 「ねぇ。まってよー」 「待たないから追いかけてこないで」 「えぇ、いじわるー」 まだ幼さそうなきょうだいと思われるふたりが、そんなやりとりをしながら小走りでわたしの前を通り過ぎていく。 微笑ましいと思ったものの、追いかけていった方の子を自分に当てはめて考えてしまい、胸がざわついた。 ーーー自分の欲のために、旅行のような体でとはいえ、追ってきてしまったけれど、あの子のように雅也くんに拒否されたらどうしよう。 羽目を外して、遠距離恋愛の定番である浮気をしていたとしても、それを責めるつもりはない。 わたしのことは大事だとしてくれる上で、生理的な、自分ではどうにもならない欲望を抑えるために必要なことだったのだと、堂々と話してくれたら、それで十分だ。 今は顔を見たくなかったとか、これはそういうのじゃないとか、焦る姿は見たくない。
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