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それから、少しの間雅也くんの同僚の方々(だと紹介してもらった)とお茶した後、これ以上久しぶりの逢瀬に水を差すのは野暮なので、と言って彼らは先に帰ってしまった。
次の行き先も決まらないので、わたしたちはまだカフェでまったりすることに。
「雅也くん、仲良くやってるんだね」
「そりゃね。業務自体に不満はなかったし、やってるうちはそれだけを考えてればよかったからね」
「そんなに一心不乱だったんだ。仕事熱心なのはいいことですね」
「だって、忘れられるじゃん。苺花がすぐ近くにいないこと」
「あ……」
「ふとした瞬間に思い出すわけですよ。だからさっきのやつらと飲んだりして、もうすぐで戻れることをモチベーションに励んで」
「……すごい、ね」
ーーーわたしなんて、手につかなくなって、先輩や職場のひとたちに心配されちゃってたのに。
原動力に変えられる、雅也くんを見習わないとな。
「言っておくけど、こうして苺花が来てくれて、おれが喜ばないはずがないからね」
「うん。そうね。お店の中で、みんなに注目されながらキスされちゃうかもって焦ったもん」
「まじで? さすがに恥ずいな。でも、すぐにでも苺花に手を出したいのは本当だから……」
このまま、おれの部屋、来る?
テーブルの上で、わたしの右手の指が雅也くんの左手の指と絡み合う。
ーーー断る理由なんて、わたしにあるはずがない。
そんなこと、わかってるくせに。
わたしは、絡まった指を強く握り返して、上目遣いで彼を見つめた。
「……苺花、誘い返すのうまくなったね」
「師匠は、雅也くんだよ」
「じゃあ、ご褒美、あげないとな」
不意を突かれて、目を丸くした雅也くんは、そう言って熱情的な視線を向けてきた。
今夜、きっとわたしの身も心も満たされる。
まずは、さっきまで飲んでいたアプリコット味のキスから始まって。
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