その6・杉山さんとお弁当

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その6・杉山さんとお弁当

 私達は同期なのに、お互いのことをあまりにも知らない。  私達の代は同期四人。これ、実は特殊で。私達の入社前数年、新規採用はなかったそう。不況で余裕がないから人件費を削ることで対処していたのだそうだけど、若手がいないと会社の先行きが危ういと決断したのが私達の年だったらしい。現在の採用は一人か二人に落ち着いている。  なるべくタイプが違う、優秀な新人を採る、それが私達の代のモットーだったそうだ。高田と佐藤の活躍はもちろんだけど、戸田ちゃんも本当はもっと大手にいてもおかしくない大学出身だし仕事をそつなくこなす子だ。私は三人と比べると正直見劣りするけど、その分愛想よく振る舞うことを意識してうまく根回しするようにしてきたし、工夫してミスを防ぐ仕組みづくりを心掛けてきた。  それぞれが自分で動くタイプだから、お互いを必要としていなかった。同期なのにほとんど連絡を取ってなかったのは、そこらへんにも起因するかもしれない。  年の近い先輩はいない。だから、がむしゃらにやるしかなかった。  教えられてないから、教え方を知らない。  でも、それは、下を育てなくていいってことじゃない。
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