その6・杉山さんとお弁当

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 事務機器の操作は全般的にひどくて、よく今まで生きのびられたな、とむしろ感心した。特にコピー機の操作。 「なぜ! 原稿が大量にあるのに! 一枚一枚自分で原稿を変える!」 「え? え? こうするしか、ないんじゃ?」 「そんなんやってたら! 原稿飛ばして! 欠落が! 生じる! ADF(自動原稿送り装置)様に全てを委ねるんだ……!」  コピー機上部のADFに全ての原稿を重ねておき、自動読み込みをさせると、杉山さんは目を丸くして驚いていた。 「こんな素晴らしい機能があったとは……!」 「これが文明社会だ! しかも両面印刷やソートもできる!」 「ソ、ソート?」 「並べ替え。一セットごとに印刷してくれるから、自分で分けなくていい」 「神……!」  今まで原稿の入れ替えとできあがったコピーを一人分ずつ分けるのにどれだけ困らされたか……! と続けてつぶやいている。 「この機能、新人研修で習わなかった?」 「……その、教えていただいた、のだと思う、のですが、一通り操作を見せてくださっただけで、『後はやってれば慣れるわよ!』って言われてしまって……。でも、私、機械苦手で……全然覚えていません……」
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