その6・杉山さんとお弁当

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 相変わらず、雑な研修だな、と自分の新人研修を思い出した。私の時もそうだった。ただ、杉山さんと違って、私は言われた通りすぐに操作に慣れた。機械の扱いはさほど不得手じゃない。あとコピー機も、大学にあった機種と似てたから、さほど操作に苦労しなかったんだよね。ADFで原稿自動送りさせたり、紙の節約のために両面・集約印刷したりは、ゼミでも指導されたし。  目的がわからないことを説明されても、なかなか頭に入らないだろう。もともと機械が苦手で、操作方法もろくに知らなかったら、なおさら。意味がわからないまま作業させられて、作業中に説明の意図に気づいても、周囲の人は忙しそうで再確認できる状況にない。案の定失敗して、あきれた目で見られる。信頼がどんどん失われるし、余計話しかけづらくなるんじゃないだろうか。  そんなサイクルで業務こなすの、結構つらくない?  紙資料のチェックもまあ、どヘタクソだったけど、見るところに紙をあてるとかちょっとしたコツを教えたら、こうすればいいんだ! ってすごく嬉しそうにしてた。ちゃんと確認してなかったんじゃなくて、やり方を知らないだけで、意欲はすごくあったんだ。  確かに杉山さんの作業は全般に遅い。でも、きちんと教えればできるようになっていってるし、今日は余裕があるからかメモもビッチリ取ってる。理解力そのものは思っていたほど悪くなかった。
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