その6・杉山さんとお弁当

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 ちょうど区切りがよかったので、十二時前だけど、お昼にすることにした。 「豪華……」 「今日、すごく楽しみで!運動会か遠足みたいな感じで作っちゃいました!」  まさかの三段お重攻撃。二段にぎっちり和で攻めたおかずが、もう一段にお稲荷さんが詰められていた。正直、杉山さんがこんなにすごいもの持ってくるなんて思いもよらなかった。 「これ、杉山さんが作ったの?」 「はい! 料理は小さい頃から仕込まれたので、得意です!」 「そうなんだ……。すごいね」 「でも、私、覚えるの遅いから、慣れるまでは何年も何年もかかりました」 「じゃあ、遠慮なく、いただきます」 「どうぞ!」  とても丁寧に作られたお弁当だった。煮物、少し薄めの味付けに出汁が効いてておいしい。卵焼きもちゃんと出汁入れてる。出汁入ってると焼くの難しいのに、巻きも綺麗。出汁、多分これちゃんと自分で取ってる。インスタントの味じゃない。エノキのベーコンで巻いたやつ、おいしいけど結構手間かかる。さやいんげんの茹で方上手だ。全然色が褪めてない。お稲荷さんとかひさしぶりに食べるなあ。  考えていたのはここまでくらいで、あとはあまりにおいしくて何も考えずに黙々と食べ続けてしまう。
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