その6・杉山さんとお弁当

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「あの残業代わっていただいた日も。仕事では絶対、絶対泣かないって決めてたんですけど、初めて時間内になんとかできそうで、今日こそはご迷惑かけずに済むと思ってたところでダメになったから、ショックが大きくて。本当に申し訳ありませんでした」  そう謝られて、彼女が仕事で泣いたのは、あの時が初めてだったのだと今更気づいた。できないという印象が強すぎて、泣くことに違和感がなかったんだ。  今まで、杉山さんのこと、フィルターを通して見てた?  いつもキラキラした笑顔の可愛い女の子。  もし私を避けてきたら、仕事ができない上に感じが悪いと思っただろう。  普通に接してきても、もっと仕事に一生懸命取り組めよと思っただろう。  きちんとした身なりに笑顔でいても、そんなのどうでもいいから仕事できるようになればいいのにと正直思ってた。  どんな態度でも、私の見方が変わらない限り、彼女にとっては詰みだ。  私、杉山さんに対して、ものすごくひどいことをしていたんじゃない?
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