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次、一緒にここに来た時はおいしく食べられるように、そして、その未来を勝ち取るために、今は食べる。
そう決めて、残りの牛丼を勢いよく口に運ぶ。
「相変わらず、ガツガツ食べるねえ」
「腹が減っては戦ができぬから!」
「……まあ、そうだけど」
一緒にいた頃よりも平坦な口調。でもかまうもんか。関心を向けてもらえるだけ、声を掛けてもらえるだけ、会えなかった頃よりはるかにましだ。
その後は二人とも無言で食べ続け、ほどなく店を出ることになった。
「じゃあ、これで。ごちそうさま」
外に出るなり、そっけなく佐藤が去ろうとするので、あわてて袖口をつかむ。
「……何?」
「冷蔵庫、壊れたの」
「さっき聞いた」
「だから! ちゃんと確認に来て!」
「え?」
「壊れたら教えろって言ったんだから、それくらい責任持ってよ!」
そう言って、私は佐藤を射抜く気で見つめる。来ると返事をするまで、絶対にそらさない、そう決めて。
佐藤はしばらく口を開いたまま言葉を探している風だったけど、諦めたように、わかったと言った。
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