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「いくら身体をつなげても、気持ちは縛れない」
「そうだよ! 縛れないから、好きになってほしいとか、一緒にいるのを喜んでほしいって、思うんだよう……」
「広瀬、なんでそんなに怖がってるの」
「女は受け入れる側だし、リスク高いんだから、怖いに決まってるじゃん! 相手が、佐藤が、本気じゃなかったら、つらいし、嫌だ……」
「俺は、行動で示してきたつもりだったけど」
「だったら!」
それでも不安なんだから、してほしいことをきちんと言葉で伝えることにした。
「だったら……私に対する気持ちを言ってほしいし、名前、呼んでほしい……」
しばらく黙っていた佐藤が言う。
「あの時」
「あの」で浮かぶ可能性がありすぎて、どれかわからない。佐藤、自分が察せられる方だからって、相手も同じレベルでわかると思ってて、結構不親切だよね!
そんな私の表情をお察しくださって、佐藤が言い直す。
「付き合ってないって言われた時、あんなに行動で示しても全然伝わってないんだって、切なくなった」
「傷ついた顔してた。そこは、ごめん」
「口先だけのことに負けるのか、みたいに思った」
「でも! 言葉にするっていうのも行動だから! だから人間は話をするんじゃん……」
佐藤は黙っている。
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