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そのまましばらく無言で抱き合っていた。ふれる肌に、鼓動に、私の背中をゆるやかに支えてくれる腕に、祥の体温と匂いに、とても安心する。
ここが自分の居場所だというのが、しっくりきて。祥にとってもそうなんだと、穏やかな表情から伝わってきて。
事後にこれだけ幸福感と安心感がないまぜになって心が温まったことは、これまでなかったように思う。ただただ嬉しい。
ほんと、顔、好みじゃなかったはずなのにな。
愛おしくて仕方なくて、祥の顔を思わず見つめてしまう。視線に気づいた祥が私を見返し、目が合った。祥は私の瞳を見つめながら、顔を近づけてくる。互いの睫がふれた気がした。
「睫がふれあうこと、バタフライキスっていうんだって」
祥がそう教えてくれる。
「ふうん」
「いいよね。このふれたかふれないかわかんないやつ」
「うん。繊細でロマンティック」
今度は鼻を私の鼻にこすりつけるようにする。
「こういうのエスキモーキスっていうんだって」
「ふうん。なんか可愛いこの動き」
「可愛いよね」
祥は無邪気に笑う。
「遥とは、いろんなキスしたい」
祥はそう言って、今度は本格的なキスを仕掛けてきた。舌を食むように、唾液を吸い尽くすように、口内を味わわれる。あっというまに息が上がってしまって、思わずしがみつくように背中に手を回してしまう。
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