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「あー……」
祥が腑に落ちたという顔をしている。
「そう感じたんだ、遥」
「え?」
「そういうつもりじゃなくて。震えてたから、大丈夫、安心して、と思って」
「そう、だったの? てっきり、映画つまんないし、そういう場面だったから興奮して始めようとしたのかと……」
「確かに映画つまんなかったけど、そういう風に解釈されると、俺、めちゃくちゃクズい……」
「その……自分が祥の彼女だって確信がなかったから、映画と状況が重なる気がして、こわかった……」
祥にゆっくりと引き寄せられて抱きしめられる。今回は正面から。
「あの映画、くやしかったから最後まで見たんだけど」
「……見たんだ」
「あのお嬢さんは権力者の隙を突いて逃げ出して、革命でのしあがって、最後には金と愛する男を手に入れて幸せになってた」
「そんなどんでんがえしが!」
サブキャラとはいえやっぱりつらい設定だったから、幸せになってよかったと、映画のことなのにちょっとほっとする。
「うん。『私は権力になんか屈しない! 欲しいものは自分で手に入れる!』とか叫んでて、かっこよかったよ」
「どこまでもベタな台詞しか使わない映画だね」
「んー、でも、ベタだからこそ普遍的なんだと思ったよ」
そう言って、祥は私に微笑みかけた。
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