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⑥
白いスチール製の椅子に座りながら、2人はコーヒーを注文する。
早速昌子が口火を切った。
「ご連絡もせず突然申し訳ありません」
頭を下げる昌子。海は、この人は40歳代くらいかなと見当をつけた。ショートカットで肩のあたりが、がっしりとしている。
「いえ、別に僕は構いません。あの、この名刺の児童養護施設ってどういうところですか?」
「簡単に言えば、保護者がいないとか、虐待とか家庭に問題がある児童生徒の自立を支援する施設です」
「ああ、そっか。で、相模原さんは学校で言うとナオミさんの担任みたいなことをする人なんですね」
「まあ、そうですね。そう思っていただいて結構です。ナオミは、園から中学校に通学をしています。今、1年生です。」
「え? ナオミさんは中学生! それにしては、小柄な感じがしました。中学生か……」
「ええ、まあ、あの、本来なら個人情報をお話することは、絶対ないのですが、吉原さんは、今後ご協力をいただくことがあるかもしれないので、お話させていただきます」
「な、何でしょう」
海は、何か難しい依頼をされそうな雰囲気にこぶしを握り締めた。
「吉原さんは、先日のナオミの様子を見て、どう思われました?」
「何か、人に対して不信感を持っていると言うか、それでいて素直に言う事を聞いたり。と思えば人に迷惑をかけている自分を責めたり。僕は発達障害の人を知っていますが、発達障害の行動とも違う感じがして」
「そうですね。吉原さんの観察は正しいです。ナオミは、愛着障害なんです」
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