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「そんな……じゃあ、ぼくはどうなるんですか?」
「落ち着いてちょうだい。今、あのてんとう虫の素性を調べてるから」
受付地蔵さまはそう言うと、目の前の長い長い巻物をぐっとにらみつけた。
すると巻物は手を触れたわけでもないのに、スルスルと右から左へ、おそろしい速さで展開しはじめる。その奇妙な技に、雪兎は目を奪われた。
しばらくしてから、受付地蔵さまが「ああっ」と声をあげた。
「あったわ。てんとう虫のことが分かった。
どうやら、前世は畜生道を生き抜き、来世は餓鬼道へ行く予定だったみたいね。これまでの経歴を見る限り、あまりまっとうな生き方はしてこなかったみたい」
畜生道。だから虫の姿だったのだと、雪兎は納得した。
「雪兎さんは天道へ行くはずだった。
でも、あの虫があなたの名前を使って入ってしまったから、天道門が再びあなたを認識するためには、こちらで再登録しなくちゃいけない。
てんとう虫をつかまえて天道の入場枠を確保するのと、雪兎さんの再登録。
このふたつが必要となるわけだけど……それってとっても時間がかかるのよ。
今すぐ転生したいなら、あいつが向かうはずだった餓鬼道に、あいつの名前を使ってねじ込んであげることもできるけど?」
「それは……てんとう虫の代わりに、ぼくが餓鬼道へ行かなくちゃいけないってことですか」
雪兎は悲鳴をあげた。
お腹が空き過ぎて骨と皮ばかりになってしまう世界なんて、ぜったい嫌だ。空腹がどんなに辛いことか、雪兎は知らない。
知らないからこそ、想像しただけでお腹のあたりがきりきりと痛むような気がして、とても耐えられそうになかった。
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