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陣痛が来たのは、午前4時を回った頃であった。
何か違和感を感じたのだろう。
私の横で眠れない妻が、小さく痛がり始めた。
最初は気づかなかったものの、思わず出たであろう妻の声に、私は一気に目が覚めていた。
「どうしよう…」
不安そうな妻に、私は様子を見ながら、どうしても辛い場合は病院に連絡することを伝えた。
そうするねという妻が苦しむ姿に、すぐにでも電話をしたくなった。
ただ、時間も時間であれば、そんなにすぐに産まれるものではない。
見つからない優しい言葉を探しながら
私は痛がる妻と最後の支度をする。
「電話、するね。」
1時間ほど経った頃、ようやく妻が携帯を取り、病院に電話をする。
本当は、電話だってしてあげたかった。
本人以外ではダメなことも分かっている。
それでも
男である私にとって
この10ヶ月を頑張ってくれた妻に
こんな直前でさえ
何も出来ない自分が辛かった。
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