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第一章
母が亡くなったのは、私が8歳の時だった。
病気が見つかった時はすでに手遅れで、入院して1か月で亡くなった。
気が弱く、人とあまり喋れない私は、クラスでも浮いていて、クラスメイト泣かされる事も多かった。
泣いて帰ると母はいつも泣き止むまで側に寄り添っていてくれた。
首を傾げて、俯いた私の顔を覗き込んでくる。
『恵那。里尻恵那(エナ)ちゃん。こっちおいで。ママがぎゅっとしてあげる』
そう言って優しく抱きしめてくれた。
私の記憶の中の母は、何も聞かず泣き止むまで抱きしめてくれる優しい母だった。
その母が亡くなってからは、しばらく学校に行けずにいた。
突然大好きな母を失って、悲しいとか苦しいとかよりも、ポッカリと魂のない人形のような状態になっていた。
食欲も睡眠欲も何も感じない状態だった。
心配した父は学校を休ませてくれ、一日中家で休めるようにしてくれた。
会社を休んで遊園地に連れて行ってくれたり、心の病院に連れて行かれた事もあった。
本当に父には心配をかけてしまって申し訳なかったと思っている。
それでも私の状態は良くならず半年が経った。
そんな時にあの子に出会ったのだ。
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