好きなものに嘘をつきやがったらぶっ◯す!

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   某国における、某月某日。国史でも類を見ないほどの大きな戦争が勃発した。  犬をこよなく愛する犬派と、猫をこよなく愛する猫派が、武力を用いて各地でぶつかり合ったのだ。かつてなく大規模なこの争いは、甚大な被害をうんだ。  凡そ1年が経過してようやく争いは鎮静化したものの、両者の間には深い溝が刻まれた。  犬派と猫派を隔てる壁はこれ以上ないほどに分厚くなり、どちらにも属さないものは容赦なく粛清された。  中立を守っていた者も、命惜しさにどちらかの派閥に入った。  数ヶ月後、またもやその国では戦争が起きた。  今度は、きのこの山派とたけのこの里派で国民がまっぷたつになった。  いや、正確には4つに分かれたのだ。  きのこの山派閥とたけのこの里派閥の争いは、硬い結束力で結ばれた犬派と、同じく硬い結束力で結ばれた猫派をも分断したからである。  結果的に、国民は【犬派+きのこの山】派と、【犬派+たけのこの里】派と【猫派+きのこの山】派と、【猫派+たけのこの里】派という、4つの派閥に分断されることとなった。  そしてまたその数ヶ月後、今度はポッキー派とトッポ派とプリッツ派の間に争いが起きてしまう。4つに分断されていた国民らはさらに派閥内で3つに分裂し、国民はついに12の派閥に分かれた。  そんなことを繰り返し続けて、はや10年。  その国には、完璧に同じ好みを持つ者同士で集まった「派閥」が乱立していた。おまけに、街中で違う派閥と出くわせば即座に銃撃戦になるほど、治安も悪化してしまう。  だが、それは誰もが各々の「好き」を貫くようになった結果として、当然のものだった。  そして、そんな国のあるアパートの一室。  たった2人しかいないとある希少派閥が、遅い朝食を迎えようとしていた。物語はそこから始まる。
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