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「これで安心してあの世に旅立てるよ」
二宮さんは言う。
「もう心残りはないんですか? 」
「大切な人達を残していくのは心残りだが仕方ない。あとは先生に任せるよ」
「任せる? え?」
意味がわからなかった。
「そうだ、お礼に一つ、教えておこう。そこ」と、二宮さんは机の上を指さす。
「あんた、河原で拾った石を置いてるだろう」
「あ、はい」
水辺の生き物の観察授業の下見に一人で河原へ行った時、プリントが飛ばないよう重しにするのにちょうどいい平たい石を見つけ持ち帰っていた。
「それさ、古い墓石が割れて川に流れて丸くなったやつだぜ。そんなの置いてるから、霊道が通っちゃったんだよ。川に戻せば、霊道はよそに移動するさ」
「え、そうなんですか!」
僕は驚いた。
「じゃあな、先生。俺は行くよ。ありがとな」
「二宮さん」
急にベッドの横に道が開けた。二宮さんはしっかりとした足取りで、その道を進んで行った。
ふと、なぜ二宮さんは僕が先生って知っていたんだろうと思った。
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