1. 教師の道

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「おい。おい、あんた」  ある晩、ベッドで眠っていると、夢の中で誰かに起こされた。 「おい、起きろ。あんたに話がある」  身体を揺さぶられる。え? これは夢じゃないのか? 僕は暗闇の中で目を開ける。 「ひゃあっ!」  叫び声を上げて、身を起こす。  暗闇にぼおっと月の光が差し、見知らぬ男が立っていた。 「ど、泥棒!」  思わず声が出る。  しかし、よく見ると男は半透明なのか、背後の窓から差す月明りが透けている。生きた人間ではない?  本当に怖い時は、叫び声さえ出ないようだ。夢かと思って頬をつねるが、痛い。 「あんた、さっき俺を見てただろう」  男に言われて、首を傾げる。  男は三十代後半。痩せ型で白いシャツに黒いスーツ、頭はオールバックに整えて、顎髭がある。目つきは鋭く、その右目の端からこめかみに一本の傷があり、どう見ても堅気じゃない。  小学校の教師に、そんな知り合いがいるはずもない。  僕が考え込んでいると、「自転車で通りかかっただろ」と男が言う。 「あっ」  言われて思い出した。
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