2. 分かれ道

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「で、なんでここに?」 「それがさ、たまたま霊道がここを通ってて、あんたを見つけたのさ」 「レイドウ?」 「ああ。幽霊の道だよ。俺も死んで初めて知ったんだが」と男は説明を始めた。 「幽霊はどこにでも自由に行けるってわけじゃないらしい。霊道が通ってる所しか行けないんだ。で、誰かいないかと歩いていたら、あんたを見つけたんだ」  男は感心したように続ける。 「しかしあんた、こんな所でよく寝られるな。夜になると、大勢の霊がここを歩いているのにさ」    男の言葉に、ああそうなのかと合点がいった。  夜中に見えるたくさんの足、喧噪、睡眠不足、全部その霊道のせいなのか。僕が最近の様子を話すと、男は肯いた。 「そりゃ、大通りの道端に布団を敷いて眠ってるようなもんだ。眠りが浅いのももっともだ」    なるほどなと納得する。待てよ。 「僕に何の用事ですか?」  眠りの改善を指導しにきたわけじゃないだろう。  男は僕の質問には答えず、机の書類をめくっていたが、やがて振り返り、「実はあんたに頼みがあるんだ」と言う。 「頼み?」  僕はごくりと唾を呑み込み身構える。
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