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4. 任侠の道
次の日の夕方、仕事を早く切り上げると、僕は深めの帽子を被り、人目を忍びつつ、皆戸組の組事務所を訪問した。
事前に電話で、二宮さんの友人と名乗り、組長に伝えたいことがあると面会を申し出ると、意外にもすんなり会ってもらえることになった。
二宮さんの入れ知恵で、「二宮さんが、姐さんの作ってくれたパエリアがおふくろの味だってよく言っていました」と言えと指示され、その通りに伝えたからだろう。
組事務所は駅の裏側の繁華街のビルにあった。ドアを開くと普通の事務所という感じだったが、二宮さんの倍以上は強面の面々が勢ぞろいして迎えてくれた。
「あの、僕……」と名前を告げると、「二宮の兄貴のご舎弟の! さあ、どうぞ」とそれは丁寧に奥に案内される。
「親分、二宮の兄貴のご舎弟です」
「お通ししろ」
野太い声が中から聞こえた。
中に入ると、豪華なインテリアの部屋に、六十代位の男が座っていた。スーツ姿に黒縁眼鏡をかけ、恰幅がいい。
「あんたが二宮の友達? ずいぶん若いな」
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